ウーバー・テクノロジーズ社(NYSE:UBER)の2024年3Q決算が控える中、2024年2Q決算を振り返っていく。
総資産と株主資本の動向
ウーバー・テクノロジーズ社は2024年6月30日時点で総資産415億ドルに達した。現金および現金同等物は44.97億ドルに減少したものの、短期投資は17.95億ドルに増加。株主資本は123.5億ドルに上昇し、前年同期比で約9億ドルの増加を記録した。
売上高と部門別業績
2024年6月30日までの6ヶ月間の売上高は208.31億ドルで、前年同期の180.53億ドルから増加。モビリティ部門の売上が11.77億ドル、デリバリー部門が6.51億ドル、フライト部門が2.56億ドルとなり、全体として成長を示した。一方、コストと経費は19.86億ドルに増加し、営業利益は96.8億ドルに達した。
営業利益と純利益の大幅増加
第2四半期の総収益は107億ドルで前年同期比16%増加。総予約額も399億ドルから409億ドルへ19%増加。特にモビリティ部門の予約額が27%増加し、配送部門も17%成長した。フライト部門は1%減少した。営業利益は前年同期の3.26億ドルから7.96億ドルに、大幅に増加。純利益も3.94億ドルから10.15億ドルへと158%増加し、1株当たりの基本純利益は0.17ドル、希薄化後は0.15ドルを記録。調整後EBITDAは9.16億ドルから15.70億ドルへ71%増加した。
キャッシュフローと投資活動
営業キャッシュフローは32.36億ドルに達し、投資活動では1.918億ドルのキャッシュ使用。財務活動では、償還や株式発行に伴うキャッシュフローが-2.91億ドルとなった。フリーキャッシュフローは82%増の30.80億ドルを記録した。
投資と資本構成の強化
短期投資は17.95億ドルに増加し、特に上場有価証券が19.03億ドルに上昇。デリバリーヒーローのFoodpanda台湾買収に向けた準備が進行中で、2025年上半期に完了予定。長期債務は94.54億ドルとほぼ横ばい。2025年および2028年のコンバーチブルノート発行により資本構成が強化された。リボルビングクレジットファシリティは25億ドルに増額され、財務の柔軟性が向上した。
セグメント別業績詳細
ウーバーはモビリティ、配送、フライトの三つのセグメントで事業を展開している。
モビリティ部門
収益は前年同期比25%増の61.34億ドルに達し、調整後EBITDAも34%増の15.67億ドルとなった。主にトリップ数の増加が寄与している。
配送部門
収益は前年同期比8%増の32.93億ドル、調整後EBITDAは79%増の5.88億ドル。配送予約額も16%増加している。
フライト部門
収益は前年同期比1.6百万ドル減少したが、調整後EBITDAは14%増の-1.2億ドルに改善した。
Source:finviz
法的リスクとコンティンジェンシー
ウーバーはドライバーの雇用分類に関する複数の法的問題に直面している。カリフォルニア州では独立契約者としてのドライバー分類を巡る訴訟が継続中。プロポジション22の成立によりドライバーは独立契約者としての地位を維持できるものの、過去の期間に関する訴訟は未解決。スイスやマサチューセッツ州でも同様の問題が提起されており、これらの法的手続きの結果が財務状況に重大な影響を与える可能性がある。さらに、英国やブラジルにおけるVATや社会保障費に関する訴訟も続いており、これらの法的および税務上のリスクは引当金として計上されているが、最終的な解決は不透明とのことである。
資金繰りとキャッシュフローの詳細
2024年6月30日時点で63億ドルの自由現金および短期投資を保有する。運転資金のニーズを十分に賄える見込み。営業活動によるキャッシュフローは前年同期比80%増の32.36億ドル。投資活動では19.18億ドルのキャッシュを使用し、主に市場性のある証券の購入や設備投資に充てた。金融活動では株式の自己株買いプログラムに基づき2.91億ドルのキャッシュを使用している。
リスク要因
1. ドライバーの分類リスク
- 法的課題: ドライバーを従業員、労働者、または独立契約者として分類すべきかについて、世界中で継続中および潜在的な法的闘争が存在している。
- 財務的影響: これらの法的紛争を防御、和解、解決するためのコストが大きくなる可能性。
- 法改正の影響: カリフォルニア州のプロポジション22のような法改正により再分類が必要となり、コスト増加、利用者への料金引き上げ、ドライバー供給の減少が発生する可能性。
- 労働組合化リスク: 再分類によりドライバーが労働組合によって代表される可能性があり、ビジネスモデルの変更や運営コストの増加を招く恐れ。
2. 競争環境
- 高い競争: モビリティ、配送、物流セクターは参入障壁が低く、グローバルな競合他社が多数存在している。
- 市場の分断: LyftやDoorDashなどの確立されたプレーヤーと各地域で競争。
- 価格競争とインセンティブ: 競争力のある料金設定、ドライバーインセンティブ、消費者割引の提供が財務パフォーマンスに悪影響を与える可能性。
- 技術革新: 競合他社が優れた技術や革新的な機能を採用することで、同社の市場魅力度が低下する恐れ。
3. 財務パフォーマンスと収益性
- 営業損失: 過去に大きな累積赤字を抱え、収益性の達成が困難であることを示唆。
- 営業費用の増加: 成長、技術、マーケット拡大への継続的な投資により、損失が持続または増加する可能性。
- ドライバーおよび消費者の維持: 十分なドライバー数の維持や消費者の獲得が困難で、収益と収益性に影響を与える可能性。
4. 国際事業リスク
- 規制およびコンプライアンスの課題: 約70カ国での事業展開により、多様でしばしば厳しい現地法に直面。
- 文化および運営の違い: 各国の文化的および規制環境に対応する運営管理が非効率やコスト増加を招く可能性。
- 経済および政治の不安定: 地政学的緊張、経済変動、地域紛争(例: ロシア・ウクライナ)への曝露により、事業運営が混乱する恐れ。
5. 技術およびサイバーセキュリティリスク
- システムの信頼性: 複雑なITシステムへの依存により、ソフトウェアバグ、システム停止、サイバー攻撃がサービスを中断させ、評判を損なう可能性。
- データセキュリティ侵害: 過去のインシデント(例: 2016年のデータ侵害)により、重大な責任やユーザー信頼の喪失につながる脆弱性が示されている。
- AIおよび機械学習リスク: AIの統合に伴い、アルゴリズムのバイアス、データプライバシー、進化する規制環境に関連するリスクが発生。
6. ブランドおよび評判管理
- ネガティブな報道: 過去および現在のネガティブなメディア報道がブランドを損ない、ユーザーや従業員の獲得・維持が困難に。
- 安全性の問題: ドライバーによる暴力事件や事故の報告がユーザーの信頼を損ない、規制の監視を強化する可能性。
- 職場文化: 過去の文化的課題および職場慣行の改善努力が、ポジティブなブランドイメージの維持に重要。
7. オペレーショナルなスケーラビリティと効率性
- 成長の管理: 急速な拡大により運営の複雑性が増し、システム、人員、内部統制の効果的な管理が必要。
- 労働力管理: 特に競争の激しい労働市場において、優秀な従業員の採用、トレーニング、維持が困難。
- 自動運転車への投資: 自動運転技術への大規模な投資は、パフォーマンス、規制承認、ドライバーの職の喪失に関連するリスクを伴う。
自社株買いプログラム
7.0億ドルの株式買戻しプログラムが承認され、既に3.26億ドル分の株式を買戻し実施している。