株式会社日立製作所(証券コード:6501)は、2025年3月期第2四半期(2024年4月1日~2024年9月30日)の連結決算を発表した。同期間の売上収益は4兆5459億8百万円で、前年同期比で8.3%減少した。しかし、調整後営業利益(Adjusted EBITA)は4兆047億3百万円と24.4%増加し、税引前中間利益は4兆6702億円で16.5%の上昇を記録した。親会社株主に帰属する中間利益は4兆3933億5百万円と前年同期比で36.4%増加した。
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3セクターでの好調な業績
デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ、コネクティブインダストリーズの3セクターは、売上収益と調整後営業利益の両面で増収増益を達成した。特にグリーンエナジー&モビリティセクターは28%の売上増を記録し、再生可能エネルギーやデータセンター関連ソリューションの需要が好調だった。デジタルシステム&サービスセクターもDX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーションの追い風を受けて成長を続けた。
セグメント別業績
- デジタルシステム&サービス(DSS):売上収益は前年同期比5%増の6,783億円、調整後営業利益は81億円増の907億円(前年同期比+9.8%)となった。国内外でのデジタル需要が堅調に推移し、DXやモダナイゼーションの案件が業績を牽引した。
- グリーンエナジー&モビリティ(GEM):売上収益は26%増の9,014億円、調整後営業利益は304億円増の670億円(前年同期比+83.2%)となった。送電網設備の更新需要や再生可能エネルギー、データセンター関連ソリューションが好調で、特に日立エナジーや鉄道システム事業が業績を押し上げた。
- コネクティブインダストリーズ(CI):売上収益は2%増の7,809億円、調整後営業利益は98億円増の877億円(前年同期比+12.6%)となった。ビルシステムや計測分析システムが堅調に推移し、収益性が改善した。
日立Astemoの影響と全社的な動向
一方で、日立Astemoの持分法適用損益の悪化が連結業績に影響を及ぼし、全社的には調整後営業利益が前年同期比で54%減少した。しかし、日立Astemoを除く3セクターでは売上収益が11%増加し、調整後営業利益も465億円増加した。これにより、3セクターを除いた場合の調整後営業利益は大幅に改善している。
財政状態とキャッシュ・フローの状況
資産総額は12兆5686億28万円に増加し、負債合計は6兆3616億81万円から6兆9130億29万円に増加した。自己株式の取得も進行中で、2024年7月1日に実施された株式分割後、普通株式1株につき5株の割合で株式が分割された。
キャッシュ・フローでは、営業活動によるキャッシュ・フローが3兆2333億35万円と前年同期比で増加。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは約1兆1千億円のマイナスとなり、財務活動によるキャッシュ・フローも約1兆9千億円のマイナスとなった。現金及び現金同等物の期末残高は794億264万円となった。
人材戦略の状況
人材戦略でも大きな進展が見られる。グローバルにデジタル人材を確保・育成するため、採用活動や事業買収を通じてデジタル人材の獲得を加速させた。国内では日立アカデミーを中心に100以上のDX研修プログラムを提供し、内部育成にも注力している。また、次期CEO候補や事業部門長候補の育成プログラム「Global Leadership Development(GLD)」や「Future 50」プログラムを通じて、多様な経営リーダーを育成している。
コーポレートガバナンスの状況
コーポレートガバナンス面では、取締役会の独立性と多様性を強化し、社外取締役の比率を高める取り組みが進められている。2024年6月末時点で社外取締役の女性比率は24%、外国人比率は31%に達し、多様な視点を経営に反映させている。さらに、取締役会の実効性を高めるために、定期的な評価と改善策を実施し、経営の透明性と公平性を確保している。
リスクマネジメントでは、急速なデジタル化や地政学的リスクに対応するため、リスクマネジメント体制を強化した。特に、AIガバナンスの仕組みを整備し、生成AIの利用に伴うリスク管理を徹底している。また、サイバーセキュリティ対策にも力を入れ、情報漏洩や操業停止リスクに対する防御策を強化した。
配当と株式政策
配当については、2024年3月期には総額180円の配当を実施し、2025年3月期には中間配当として21円が予定されている。また、自己株式取得も進められており、9月末時点で1,234億円(進捗率61.7%)を取得した。またキャッシュフロー重視の経営方針を継続し、コアフリーキャッシュフローの増加を図っている。2024年度にはキャッシュ効率が向上し、D/Eレシオは0.2倍まで低下した。これにより、成長投資と株主還元のバランスを保ちながら、資本効率のさらなる向上を目指している。特に、生成AIやデータセンター、半導体製造分野への1兆円規模の成長投資を計画し、これらの分野での売上成長を加速させる方針だ。
将来の見通しとリスク要因
日立製作所は、3セクターにおいて売上収益1兆500億円、調整後営業利益1兆950億円の上方修正を行った。特にデジタルシステム&サービスセクターは、DXや新技術の導入による成長が見込まれている。グリーンエナジー&モビリティセクターも再生可能エネルギー需要の拡大により堅調な成長が期待されている。
しかし、為替変動や資金調達環境、原材料価格の変動などのリスク要因も存在する。これらのリスクに対応しつつ、技術開発や市場拡大を進める方針を示している。
総括
今回の決算発表により、日立製作所は主要セグメントでの成長を維持しつつ、調整後営業利益の大幅な増加を達成したことが明らかとなった。一方で、日立Astemoの持分法適用損益の悪化が全社的な業績に影響を与えたものの、3セクターを除くと増収増益が続いている。財政基盤の強化と持続的な成長戦略を進める中で、今後の動向にも注目が集まる。