本記事ではマイクロストラテジー社(MicroStrategy Incorporated)の2024年3Q決算を分析し、解説していく。
業績ハイライト
マイクロストラテジー社は、2024年9月30日現在の連結決算でマイクロストラテジーの総売上は1億1,607万ドルで、前年同期の1億2,946万ドルから減少した。製品ライセンス収入は顕著な落ち込みを見せたが、サブスクリプション・サービスの利益は相殺され、2023年第3四半期の2097万ドルから2780万ドルに増加した。
出典:UnsplashのTraxerが撮影した写真
総資産が前年の47億6,252万ドルから83億4,358万ドルへ大幅増加した。この増加は、ビットコインなどのデジタル資産保有額が前年の36億2,648万ドルから68億5,087万ドルに跳ね上がったことが主な要因だ。一方、流動資産は2億8,604万ドルから1億8,604万ドルへ減少した。
負債面では、長期負債が前年の21億8,210万ドルから42億1,194万ドルに倍増。コンバーティブルノートの発行やその他の長期借入金の増加が寄与している。株主資本も前年の21億6,497万ドルから37億7,364万ドルに増加し、財務基盤が強化された。
同社は2024年8月7日にクラスAおよびクラスB普通株式の10対1の株式分割を完了し、株式数が大幅に増加。また、ブラジルでの規制遵守問題や特許侵害訴訟の和解などの法的問題があったが、財務状況への影響は限定的とされている。
今後、マイクロストラテジー社はビットコインを主要な財務資産として蓄積し、財務戦略の一環として活用する方針。新たな市場での株式発行プログラムも計画し、さらなる資金調達を目指す。
総じて、デジタル資産への積極的な投資を続ける一方で、営業収益の減少と損失拡大に直面。市場動向とビットコイン価格の変動が財務状況に大きく影響する見込みだ。
ビットコイン保有状況の推移
同社はビットコイン購入資本として主にクラスA普通株式の売却資金を利用。2022年12月31日時点で132,500ビットコインを保有していたが、四半期ごとに購入を継続し、2024年9月30日時点で252,220ビットコインに増加。この期間中のビットコイン取得には約9.9億ドルを費やし、1ビットコインあたりの平均購入価格は約39,266ドルとなった。MicroStrategyは2024年の資本市場活動で1.1億ドルのクラスA普通株の売却と10億1,000万ドルの2028年満期の転換社債発行を通じて資金を調達した。これにより、2028年満期の500百万ドルの担保付債券を返済し、全ビットコイン保有資産を無担保化した。
デジタル資産の減損損失
ビットコインの価格変動に伴い、減損損失を計上している。2024年9月30日までの9ヶ月間で減損損失は7億8,380万ドルに達し、前年度の同期間の減損損失7億6,130万ドルから大幅増加。これはビットコインの市場価格が取得価格を下回ったためで、将来的にも価格変動により減損損失が継続する可能性がある。
- 収益: プロダクトライセンスとサブスクリプションサービスの総収益は3億8,887万ドルで、前年同期比約-13.6%減少。サブスクリプションサービスの収益は3億7,800万ドルで前年同期比32.5%増加。
- コスト: 売上原価は3億4,349万ドルで前年同期比28.8%増加。特にビットコイン購入関連のコストが大幅増。
- 営業費用: 営業費用は5億1,430万ドルで前年同期比約300%増加。主な要因はビットコインの減損損失で、営業費用の大部分を占めている。
リスク要因
ビットコイン取得戦略には多くのリスクが伴う。ビットコインの価格は非常に変動しやすく、流動性や取引量が限られているため、市場操作や不正行為のリスクも存在。価格下落時には財務状況や収益に大きな影響が出る可能性がある。さらに、税法の変更や規制強化により、ビットコイン保有や取引に関連する税負担が増加するリスクもある。
今後の展望
クラウドネイティブなエンタープライズアナリティクスソフトウェア戦略を強化し、新規顧客の獲得や収益成長、マージン向上を目指す。ビットコイン保有戦略については市場状況を注視しつつ、リスク管理を徹底する方針。将来的なキャッシュフローの確保と長期的な財務健全性を維持するため、資金調達手段の多様化も図る。
結論
同社にとってビットコイン取得と保有が財務結果に大きな影響を与えており、今後も市場変動で業績が左右される可能性が高い。引き続きビットコイン市場の動向を注視し、リスク管理を強化しながら、エンタープライズアナリティクスソフトウェア事業の成長を追求する方針だ。