アップスタート・ホールディングス社(Upstart Holdings, Inc.)(NASDAQ: UPST)は2024年9月30日に終了した四半期および九ヶ月間の決算報告を発表した。同社の収益は前年同期比で増加し、特に手数料収入が大幅に伸びた。一方で、サービス手数料は貸出残高の減少により若干減少した。同社は人工知能(AI)を活用した消費者信用のアンダーライティングプロセスを提供するクラウドベースのプラットフォームを運営している。
Source: Unsplash
まず、手数料収入全体では2024年第3四半期に1億6759万ドル、通期では4億3619万ドルと、前年同期比でそれぞれ14%と7%の増加を記録した。特にプラットフォームおよび紹介手数料が大幅に増加し、四半期では1億1234万ドルから1億3419万ドルに、通期では2億9586万ドルから3億3665万ドルにそれぞれ伸びた。この増加は、取引量の増加に起因しているが、一部はサービス価格の低下によって相殺された。一方、サービス手数料は四半期で3439万ドルから3339万ドル、通期では1億11726万ドルから99537万ドルへと減少した。これは、サービス対象となる貸出残高の減少が主な要因である。
金利収支および公正価値調整については、2024年第3四半期で純増1220万ドル、通期では純減18626万ドルとなり、全体としては前年同期比で46%の増加を示した。これは、利息収入の増加と不利な公正価値調整の減少によるものだ。
営業費用に関しては、売上およびマーケティング費用が四半期で33042千ドルから43229千ドルへ、通期では88371千ドルから1億11337千ドルへと増加した。これは主に広告費およびマーケティング活動の強化によるものである。また、カスタマーオペレーション費用も四半期で36914千ドルから39302千ドル、通期では1億14301千ドルから1億17394千ドルへと増加したが、売上に対する割合は減少している。
エンジニアリングおよび製品開発費用は四半期で54941千ドルから64887千ドルへ、通期では2億22986千ドルから1億86431千ドルへと増減が見られた。特に通期では人件費の削減により大幅なコスト削減が実現された。一方、総務およびその他の費用も四半期で53505千ドルから59874千ドルへ、通期では1億56616千ドルから1億70508千ドルへと増加した。
純損失については、2024年第3四半期では60758千ドルの純損失から3869千ドルの調整後純損失へと改善し、通期では1億25826千ドルの純損失から4億7770千ドルの調整後純損失となった。これは、株式報酬費用や債務消滅による利益の影響を除外した結果である。
流動性と資本資源に関しては、2024年9月30日時点で無制限の現金が4億4530万ドル、定期預金が500万ドル保有されている。さらに、同社は7億3040万ドルの転換社債を発行しており、これには2026年および2029年に満期を迎えるものが含まれる。また、倉庫信用施設から1億7010万ドルを借入しており、これを活用して無担保個人ローンや小口ローン、自動車ローンの購入を行っている。
キャッシュフローの状況では、2024年9月30日に終了した九ヶ月間で営業活動によるキャッシュフローが2億9725万ドル、投資活動によるキャッシュフローが1億5981万ドルの使用、財務活動によるキャッシュフローが5054万ドルの提供となった。特に営業活動によるキャッシュフローは前年同期比で大幅に増加しており、これは貸出のタイミングによるものである。
Source:finviz
主要財務指標の概要
売上高および収益の内訳
期間 | 売上高(千ドル) | プラットフォームおよび紹介手数料(千ドル) | サービシングおよびその他手数料(千ドル) | 総収益 |
---|---|---|---|---|
2023年第3四半期 | 146,755 | 112,437 | 34,318 | 146,755 |
2024年第3四半期 | 167,590 | 134,199 | 33,391 | 167,590 |
2023年度9ヶ月 | 407,585 | 295,859 | 111,726 | 407,585 |
2024年度9ヶ月 | 436,190 | 336,653 | 99,537 | 436,190 |
売上高の変動要因:
- プラットフォームおよび紹介手数料は、2024年第3四半期に前年同期比14%増加し、9ヶ月間では7%増加。これは主に取引量の増加によるもの。
- サービシング手数料は、2024年第3四半期に前年同期比3%減少し、9ヶ月間では11%減少した。これはサービスローンの未払い元本の減少が主な要因。
利息収益、利息費用、および公正価値調整
期間 | 利息収益(千ドル) | 利息費用(千ドル) | 公正価値調整(千ドル) | 総合計 |
---|---|---|---|---|
2023年第3四半期 | 37,692 | (9,414) | (40,476) | (12,198) |
2024年第3四半期 | 40,845 | (10,818) | (35,477) | (5,450) |
2023年度9ヶ月 | 116,923 | (20,828) | (130,430) | (34,335) |
2024年度9ヶ月 | 144,899 | (33,002) | (130,523) | (18,626) |
変動要因:
- 利息収益は、2024年第3四半期に前年同期比8%増加し、9ヶ月間では24%増加。これはローンの未払い元本の増加によるもの。
- 利息費用は、2024年第3四半期に前年同期比15%減少し、9ヶ月間では58%減少。
営業費用
期間 | 販売およびマーケティング費用(千ドル) | 顧客運営費用(千ドル) | エンジニアリングおよび製品開発費用(千ドル) | 一般管理費用(千ドル) | 総営業費用(千ドル) |
---|---|---|---|---|---|
2023年第3四半期 | 33,042 | 36,914 | 54,941 | 53,505 | 178,402 |
2024年第3四半期 | 43,229 | 39,302 | 64,887 | 59,874 | 207,292 |
2023年度9ヶ月 | 88,371 | 114,301 | 222,986 | 156,616 | 582,274 |
2024年度9ヶ月 | 111,337 | 117,394 | 186,431 | 170,508 | 585,670 |
主な増減要因:
- 販売およびマーケティング費用は、第3四半期で31%増加、9ヶ月間では26%増加。これは広告費用および人件費の増加によるもの。
- エンジニアリングおよび製品開発費用は、第3四半期で18%増加したが、9ヶ月間では16%減少した。前年年度の特定の費用キャンセルが影響している。
営業損失
期間 | 営業損失(千ドル) |
---|---|
2023年第3四半期 | (43,845) |
2024年第3四半期 | (45,152) |
2023年度9ヶ月 | (209,024) |
2024年度9ヶ月 | (168,106) |
営業損失の概要:
- 第3四半期では営業損失が微増しましたが、9ヶ月間では大幅に減少。これは収益の増加および一部費用の効率化によるもの。
その他の収益および損失
期間 | その他の収益、純(千ドル) | 債務償却益(千ドル) | 純損失(千ドル) |
---|---|---|---|
2023年第3四半期 | 3,540 | — | (40,315) |
2024年第3四半期 | 5,078 | 33,361 | (6,758) |
2023年度9ヶ月 | 11,334 | — | (197,734) |
2024年度9ヶ月 | 8,993 | 33,361 | (125,826) |
主な変動要因:
- 2024年第3四半期および9ヶ月間では、債務償却益が大幅に増加し、これが純損失の減少に寄与している。
非GAAP財務指標の概要
貢献利益および貢献マージン
期間 | 貢献利益(千ドル) | 貢献マージン(%) |
---|---|---|
2023年第3四半期 | 94,154 | 64% |
2024年第3四半期 | 102,376 | 61% |
2023年度9ヶ月 | 257,699 | 63% |
2024年度9ヶ月 | 259,635 | 60% |
貢献利益の意義:
- 貢献利益は、売上高から変動費用を差し引いたものであり、ビジネスのスケーラビリティと運営効率を評価するために用いられる。
調整後EBITDAおよび調整後EBITDAマージン
期間 | 調整後EBITDA(千ドル) | 調整後EBITDAマージン(%) |
---|---|---|
2023年第3四半期 | 2,252 | 2% |
2024年第3四半期 | 1,413 | 1% |
2023年度9ヶ月 | (17,836) | (5)% |
2024年度9ヶ月 | (28,182) | (7)% |
調整後EBITDAの意義:
- 調整後EBITDAは、非現金項目や特定の費用を除外したものであり、企業のコアな運営パフォーマンスを評価するために用いられる。
調整後純損失および調整後純損失1株当たり額
期間 | 調整後純損失(千ドル) | 調整後純損失1株当たり額(ドル) |
---|---|---|
2023年第3四半期 | (3,869) | (0.05) |
2024年第3四半期 | (5,325) | (0.06) |
2023年度9ヶ月 | (37,207) | (0.45) |
2024年度9ヶ月 | (47,770) | (0.54) |
調整後純損失の意義:
- 調整後純損失は、株式ベースの報酬や債務償却益などの非運営項目を除外したものであり、企業の実質的な損益状況を評価するために用いられる。
流動性および資本資源
現金および流動性の状況
- 現金および預金: 2024年9月30日時点で、非制限現金が4億4530万ドル、3ヶ月以上の満期を持つ定期預金が500万ドル保有。
- 転換社債: 2026年ノート(利率0.25%、元本7億3040万ドル)、2029年ノート(利率2.00%、元本7億3040万ドル)を発行。
- 倉庫信用枠: 3億2500万ドルまで借入可能で、2024年6月14日時点で1億7010万ドルを利用中。
- リース契約: 2027年から2029年までの間に満期が到来するオペレーティングリース契約下で、総支払い義務は5,960万ドル(うち1,530万ドルは翌12ヶ月以内)。
資金調達および支出の見通し
- 現金の利用: 既存の現金および運営活動からのキャッシュフローにより、少なくとも今後12ヶ月間の流動性ニーズを満たすと見込む。
- 追加資金調達の可能性: 事業の成長や市場状況に応じて、株式の発行や追加の債務調達を行う可能性がある。
キャッシュフローの概要
期間 | 営業活動によるキャッシュフロー(千ドル) | 投資活動によるキャッシュフロー(千ドル) | 財務活動によるキャッシュフロー(千ドル) | 現金および制限現金の変動(千ドル) |
---|---|---|---|---|
2023年度9ヶ月 | 3億3887万ドル | (8億8562万ドル) | 1億3723万ドル | 8億2561万ドル |
2024年度9ヶ月 | 2億97257万ドル | (1億59817万ドル) | 5,054万ドル | 1億87980万ドル |
キャッシュフローの変動要因:
- 営業活動: 2024年度9ヶ月では、営業活動によるキャッシュフローが前年同期比で大幅に増加した。これは非現金項目や運転資本の変動が主な要因。
- 投資活動: 2024年度9ヶ月では、投資活動によるキャッシュフローが前年同期比で増加(マイナス増加)した。これはローンの購入および起源費用の増加によるもの。
- 財務活動: 2024年度9ヶ月では、財務活動によるキャッシュフローが前年同期比で減少した。これは転換社債の償却や借入金の返済によるもの。
Upstart Holdings, Inc. は2024年9月30日までの期間において、総収益の増加を達成したが、営業損失は依然として発生している。売上高の増加は主にプラットフォームおよび紹介手数料の増加によるものであり、これは取引量の増加が寄与している。一方で、サービシング手数料は未払い元本の減少により減少した。
営業費用は全体として増加傾向にありますが、特に販売およびマーケティング費用の増加が目立つ。しかし、エンジニアリングおよび製品開発費用は9ヶ月間で減少しており、これはコスト管理の一環として評価される。
キャッシュフローの分析では、営業活動によるキャッシュフローの大幅な増加が見られ、これは主に非現金項目の調整および運転資本の変動によるもの。一方で、投資活動および財務活動によるキャッシュフローは増減が見られ、特に投資活動ではローンの購入が主な支出となっている。