ブロードコム、2024年第3四半期決算を発表
グローバルテクノロジーリーダーのブロードコム(Broadcom Inc.)が、2024年8月4日に終了した第3四半期の決算を発表した。同社は半導体ソリューションとインフラストラクチャソフトウェアの二つの主要セグメントで事業を展開している。
3Q業績ハイライト
ブロードコム社は2024年8月4日に終了した会計四半期の未監査連結簡易財務諸表を発表した。同社の総純収益は1306億2000万ドルに達し、前年同期の887億6000万ドルから約47%増加した。この増加は主にVMware社の買収によるインフラソフトウェア部門の貢献によるものである。
一方、売上原価も471億6000万ドルと増加したが、営業利益は378億8000万ドルと前年の385億6000万ドルから若干減少。純損失は187億5000万ドルとなり、前年同期の330億3000万ドルの純利益から大幅に転落している。これは主にVMware買収に伴う追加費用や減損損失が影響している。
セグメント別では、半導体ソリューション部門の純収益が727億4000万ドル、インフラストラクチャーソフトウェア部門が580億8000万ドルとなり、特にインフラソフトウェア部門はVMwareの統合により大幅に成長した。総利益率は64%で、前年同期の69%から低下したが、これは主に買収関連の無形資産の償却増加によるものだ。
研究開発費用は235億3000万ドルと前年同期比73%増加し、販売一般管理費用も110億ドルで前年同期比184%増加した。これらの増加は主にVMware買収に伴う人員増加とストックベースの報酬の増加によるものである。また、買収関連の無形資産の償却費用も増加し、これが総利益率の低下に寄与している。
第3四半期の営業キャッシュフローは49億6300万ドルを計上し、現金配当として24億5200万ドルを支払った。また、エンドユーザーコンピューティング(EUC)事業をKKR&Co. Inc.に35億ドルで売却し、50億ドル相当のシニア無担保債を発行。これにより、未払いのA-2ファシリティ残高91億9500万ドルを返済した。さらに、株式分割を完了し、1株あたりの数値を10対1に調整した。
買収および売却
2023年11月22日、ブロードコムはVMware, Inc.を現金と株式で買収。VMwareの株主には約307億8800万ドルの現金と5億4400万株のブロードコム普通株が提供された。2024年7月1日にはEUC事業を35億ドルでKKRに売却。さらに、2024年4月23日にはSeagate Technology Holdings plcのSoC(システムオンチップ)事業を6億ドルで取得し、SoC製品のポートフォリオを強化した。
業績分析
3Qの総収益は130億7200万ドルで、前年同期比47%増加。一方、営業利益は37億8800万ドルとわずかに減少。セグメント別では、半導体ソリューション部門が72億7400万ドル、インフラソフトウェア部門が57億9800万ドルを記録。特にインフラソフトウェア部門はVMwareからの貢献により前年同期比200%増加した。しかし、グロスマージンは64%に減少し、主にVMware買収による無形資産の償却増加が影響した。
キャッシュフローと資本構造
今年度の営業活動によるキャッシュフローは143億5800万ドル。投資活動では229億3800万ドルのキャッシュ使用が見られ、主に買収関連の支出が増加。財務活動では43億4300万ドルのキャッシュ提供となり、主に新規借入れによるもの。ブロードコムは手元資金と営業キャッシュフロー、75億ドルのリボルビングクレジットラインにより、今後12ヶ月間の流動性を確保している。
リスク要因
ブロードコムは以下のリスク要因を抱えている:
- グローバルな経済状況の悪化や米中貿易摩擦の影響
- VMware買収の統合失敗リスク
- 主要顧客への依存度が高く、顧客の需要減少や契約解除が業績に直結
- サプライチェーンの断絶や製造能力の不足による製品供給遅延
- サイバーセキュリティの脅威や情報漏洩リスク
- 環境法規制やデータ保護法の遵守に伴うコスト増加
特に、主要な半導体顧客が全体収益の約40%を占めており、これらの顧客からの需要減少は事業に大きな打撃を与える可能性がある。また、台湾のTSMCに対する依存度が高く、地政学的リスクや自然災害による供給停止が深刻な影響を及ぼす恐れがある。
同社は現在、重要な市場リスクとして金利変動やサプライチェーンの混乱、競争の激化などを挙げており、特にVMware統合の成功が今後の業績に大きく影響するとしている。また、主要顧客への依存度が高く、トップ5顧客への売上が全体の40%を占めているため、これらの顧客からの需要減少が業績に直結するリスクがある。
さらに、ブロードコムはサイバーセキュリティの脅威や法的リスクにも注意を払っており、これらがビジネスや財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があると警告している。特にVMware買収に伴う統合プロセスが複雑であり、これが期待された利益を実現できない場合、株価や業績に悪影響を与える可能性がある。
総じて、ブロードコム社は大規模な買収と事業再編を進める中で、収益の増加とともにコストやリスクも増大している。今後も市場の動向や統合の進展が業績に大きく影響する見込みであり、同社は引き続きこれらの要因に注視していく必要がある。
今後の展望
ブロードコムはVMwareとの統合を進める一方、インフラソフトウェア事業の拡大と半導体製品の多様化を図っている。競争激化や技術革新のスピードに対応するため、引き続き研究開発への投資と優秀な人材の確保が不可欠となる。特に、AIやクラウドコンピューティング分野での製品競争力強化が今後の成長の鍵となる。