電力業界の大手企業、ビストラ・コープ(Vistra Corp.)は、再生可能エネルギー電力会社として注目を集めている。10月30日時点で年初来で約226%の上昇を見せている。そのビストラ・コープを決算から分析する。
出典: finviz
業績ハイライト
2024年6月30日に終了した第2四半期の決算において同社の営業収益は前年同期比で増加し、38億4500万ドルに達した。一方、営業利益は8億800万ドルとなり、前年同期の5億9100万ドルから大幅に改善した。
純利益は3億6500万ドルで、前年同期の4億7600万ドルから減少したものの、ビストラの純利益は堅調な成長を維持している。この減少は主に税費用の増加によるもので、2024年6月期の有効税率は25.4%と前年の20.5%から上昇した。
ビストラの総資産は391億2500万ドルに達し、前年末の329億6600万ドルから増加。負債面では、長期借入金が139億4700万ドルに増加し、前年末の121億1600万ドルから拡大した。しかし、現金および現金同等物は16億1600万ドルに減少した。
セグメント別の業績では、リテール部門が主要な収益源となり、特にテキサスおよび東部市場での電力販売が好調だった。エナジーハーバー(Energy Harbor)との合併により、核関連事業を含む多角的なエネルギー事業の拡大が進展。この合併により、ビストラの株主はさらなる成長と多様化を期待している。
同社は5.663億ドルのシニア・セキュア・クレジットファシリティを維持し、財務の安定性を確保。また、最新の税法改正に対応し、持続可能な事業運営を推進するための取り組みを強化。特に、インフレーション削減法(IRA)に基づく新たな税制優遇措置や、セクション163(j)規制の最終版に対応した対策を講じている。
さらに、ビストラは主要な発電施設の退役計画を進めており、サンセットセグメントでは複数の火力発電所の退役が予定されている。これにより、環境負荷の低減と持続可能なエネルギー供給の実現を目指す。
株式買戻しプログラム
ビストラは2021年10月に開始した株式買戻しプログラムにより、これまでに約1億1,821万株を買戻し、総額7億5,100万ドルを支出した。2024年6月末までにさらに1億7,357万株を買戻し、買戻し可能額は約14億9,900万ドルに達している。今後も市場状況や資本配分の優先順位に応じて、柔軟に株式の買戻しを行う方針だ。
優先株と配当
同社はシリーズA、B、Cの優先株を発行し、それぞれ異なる配当率と償還条件を設定。2024年にはシリーズC優先株に対して初回配当として1株あたり48.32ドルの配当が決定され、7月に支払われる予定。また、シリーズA優先株には10月に1株あたり40.00ドルの配当が宣言された。
事業セグメントの概要
ビストラの事業はリテール、テキサス、イースト、ウエスト、サンセット、アセットクローズの6つのセグメントに分かれる。リテールセグメントではTXU EnergyやAmbitを通じて16州およびコロンビア特別区に電力と天然ガスを供給。テキサスおよびイーストセグメントでは主にERCOT市場および東部電力グリッドでの発電とエネルギー取引を実施。サンセットセグメントは2024年以降に廃止予定の発電所を対象とし、アセットクローズセグメントでは廃止された発電所や鉱山の解体と再生を担当。
財務状況と業績
2024年6月30日に終了した四半期では、純利益が4億6,300万ドルとなり、前年同期比で減少。これはエナジーハーバーとの合併によるテキサスおよびイーストセグメントの増収と強固なリテールマージンが寄与した一方で、運営コストの増加やヘッジ活動による評価損が影響したため。6ヶ月間では純利益が4億8,500万ドルとなり、前年同期比で減少している。
合併と法規制の影響
2024年3月1日にエナジーハーバーとの合併を完了し、これにより核およびリテール事業の規模が拡大。2022年に施行されたインフレーション削減法(IRA)の影響を受け、新たなエネルギー税制優遇措置を活用し、再生可能エネルギーやバッテリー貯蔵プロジェクトへの投資を強化している。
リスク管理と市場リスク
ビストラは金利リスクや商品価格リスクの管理に注力し、金利スワップや商品先物契約を活用してリスクをヘッジ。2024年6月末時点で、商品ヘッジに関連する未実現損益は1億3,000万ドルの損失となり、市場価格の変動が業績に影響を与える可能性がある。
今後の見通し
ビストラ・オペレーションズは、持続可能な成長と財務の安定性を維持するため、引き続き株式買戻しや優先株の配当を実施するとともに、電力市場における競争力を強化し、持続可能なエネルギー供給の確保に注力することで、今後も安定した成長を続ける方針だ。法規制や市場環境の変化に柔軟に対応し、リスク管理体制を強化することで、長期的な企業価値の向上を目指す。