アップル(Apple Inc.)は2024年9月28日に終了した会計年度の年次報告書(Form 10-K)を発表しました。この記事では決算発表を通じてアップルの現在の状況をまとめています。
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事業概要
アップルはスマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット、ウェアラブルデバイス、アクセサリーの設計・製造・販売を行っており、関連する各種サービスも提供している。主な製品ラインとしてiPhone、Mac、iPad、ウェアラブル、ホームおよびアクセサリーがある。また、広告、AppleCare、クラウドサービス、デジタルコンテンツ、支払いサービスといった多岐にわたるサービスも展開している。
製品とサービス
- iPhone: 最新モデルとしてiPhone 16 Pro、iPhone 16、iPhone 15、iPhone 14、iPhone SEがラインナップ。
- Mac: MacBook Air、MacBook Pro、iMac、Mac mini、Mac Studio、Mac Proなど多様なパーソナルコンピュータを提供。
- iPad: iPad Pro、iPad Air、iPad、iPad miniなどのタブレット製品。
- ウェアラブル、ホーム、アクセサリー: Apple Watchシリーズ、AirPods、Beats製品、Apple Vision Pro™など。
- サービス: Apple Music、Apple TV+、Apple Arcade、Apple Fitness+などのサブスクリプションサービス、Apple PayやApple Cardといった支払いサービスも強化。
市場と流通
アップルのビジネスは主に地域別に管理されており、アメリカ、ヨーロッパ、中華圏、日本、アジア太平洋地域に分かれている。直販および間接販売チャネルを通じて製品を販売しており、2024年度では直販が総売上の38%、間接販売が62%を占めている。
競争状況
アップルが属する市場は高度に競争が激しく、価格競争や技術革新が絶えず行われている。主要な競合他社は技術、マーケティング、流通において強力なリソースを持ち、低価格戦略を採ることでアップルの市場シェアを脅かしている。特にスマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレット市場ではシェア拡大が困難な状況が続いている。
リスク要因
アップルの事業は多岐にわたるリスクにさらされています。主なリスクとしては、以下が挙げられる。
- マクロ経済および業界リスク: 世界的な経済状況の変動や貿易摩擦、自然災害、パンデミックなどが売上や供給チェーンに影響を与える可能性。
- 競争リスク: 新製品の開発遅延や競合他社による模倣、知的財産権の侵害など。
- サプライチェーンリスク: 特定の部品や製造パートナーに依存しているため、供給不足や価格変動が業績に影響。
- 法的および規制リスク: デジタルマーケット法(DMA)に基づくEUでの調査や米国司法省による独占禁止法違反の訴訟など、法的な問題が事業運営に影響を及ぼす可能性。
- 財務リスク: 為替変動や投資ポートフォリオの価値変動、売上の季節変動などが財務状況に影響。
- サイバーセキュリティリスク: データ漏洩やシステム侵入などのサイバー攻撃に対する脆弱性。
法的手続き
アップルは2024年3月25日にEUのデジタルマーケット法に基づく2件の非遵守調査を開始された。さらに、同年3月21日には米国司法省および複数の州検事総長による独占禁止法違反の訴訟が提起された。また、Epic Gamesとの訴訟では、カリフォルニア州地方裁判所がアップルのApp Store運営に関する不公正競争法違反を認定し、一定の措置を命じた。これらの法的手続きがアップルの業績や財務状況にどのような影響を与えるかは未定だが、最大で年間売上の10%に相当する罰金が科される可能性があルト報告している。
株式市場と株主情報
アップルの普通株式はNASDAQ市場で「AAPL」のシンボルで取引されており、2024年10月18日時点で記録上の株主数は23,301人だった。2024年度、第4四半期における株式買い戻し活動では、総計1億1,226万株を平均価格約222ドルで購入し、総額約89億ドルに達した。
売上とセグメントパフォーマンス
2024年度の総売上は3,910億ドルで前年同期比2%増加。セグメント別では、アメリカで1,670億ドル、ヨーロッパで1,013億ドル、中国大陸で669億ドル、日本で250億ドル、アジア太平洋その他で306億ドルとなった。アメリカとヨーロッパではサービス部門とiPhoneの売上増が牽引した一方、中国大陸ではiPhoneとiPadの売上減少が影響した。
製品とサービスのパフォーマンス
- iPhone: 売上は2,012億ドルで前年とほぼ横ばい。
- Mac: 299億ドルで前年比2%増加、特にラップトップの売上が好調。
- iPad: 267億ドルで前年比6%減少。iPad Proとエントリーモデルの売上減が影響。
- ウェアラブル、ホーム、アクセサリー: 370億ドルで7%減。
- サービス: 961億ドルで13%増加。広告、App Store、クラウドサービスが好調。
利益率とコスト
総利益は1,807億ドルで前年比6%増加し、総利益率は46.2%に達した。製品部門の利益率は37.2%に上昇し、サービス部門は73.9%と高い水準を維持。一方、研究開発費は313億ドルで前年比5%増、販売一般管理費は261億ドルで同じく5%増加した。
税務と法的問題
アップルはEUのデジタルマーケット法(DMA)に基づく調査や、米国司法省による独占禁止法違反の訴訟に直面している。特に、Epic Gamesとの訴訟ではカリフォルニア州裁判所がApp Storeの運営に関する不公正競争を認定し、一定の措置を命じた。このため、2024年度には一時的な税金負担として102億ドルの費用が計上された。
流動性と資本資源
現金および現金同等物、マーケットセキュリティの合計は1,409億ドルで、今後12ヶ月間のキャッシュニーズと資本還元プログラムを十分に賄えると見込んでいる。負債面では、総額973億ドルの社債が発行されており、そのうち109億ドルが1年以内に支払われる予定。また、商業手形として100億ドルの短期債務が存在する。
配当と株式買い戻し
2024年度、アップルは株式買い戻しプログラムとして1,000億ドルを承認し、既存のプログラムからさらに410億ドルを使用した。配当は1株当たり0.25ドルに引き上げられ、年間ベースでの増加を予定している。2024年には950億ドルの自社株買い戻しと152億ドルの配当支払いが行われた。
財務諸表と会計方針
アップルの財務諸表はGAAPに準拠しており、収益認識、株式報酬、税務処理などの重要な会計方針が採用されている。特に、複雑な税務ポジションやデリバティブ取引に関する開示が重要な部分を占めている。
監査報告
独立した監査法人であるアーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young LLP)は、アップルの財務諸表がGAAPに準拠して公正に表示されていると意見を述べ、内部統制も効果的に機能していると評価した。
企業統治とインサイダートレーディングポリシー
アップル社は、取締役、役員、従業員を含む全ての関係者に適用されるインサイダートレーディングポリシーを制定。このポリシーは証券の購入、売却およびその他の処分に関するもので、法令や取引所の基準を遵守するために設計されている。また、株式買い戻し手続きもこのポリシーに基づいて行われている。詳細なポリシー内容はForm 10-KのExhibit 19.1に記載されている。その他、役員報酬や取締役の独立性に関する情報は、2025年の株主総会に向けたProxy Statementに含まれる予定であり、本報告書では省略されている。
証券所有状況と関連取引
特定の大株主や経営陣の証券所有状況、取締役の独立性に関する情報も同様にProxy Statementに記載される予定。また、Principal accountant fees(主たる会計士費用)や監査関連の情報も同報告書に含まれるが、詳細は後日公開される予定である。
証券説明
アップル社の証券には、普通株式(Common Stock)と複数の社債(Notes)が含まれる。普通株式はナスダック市場で「AAPL」として取引されており、1株あたりの議決権や配当権が設定されている。株式の発行総数は504億株である。
社債の詳細
アップル社は様々な利率と満期日を持つ社債を発行している。具体例として、0.000%の2025年満期ノート、0.875%の2025年満期ノート、1.625%の2026年満期ノート、2.000%の2027年満期ノート、1.375%の2029年満期ノート、3.050%の2029年満期ノート、0.500%の2031年満期ノート、3.600%の2042年満期ノートがある。これらの社債はシニア・アンセキュア債として発行されており、各ノートの償還条件や利払い条件、イベント・オブ・デフォルト(債務不履行事由)について詳細が記載されている。特に、税金関連の追加支払い義務や償還オプションについても明確に規定されている。